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いつか、やさしく、ふる ひかり     2018オンシーズン

 小学2年生の教科書に、がまくんとかえるくんの「お手紙」というお話しがある。50年近く前にアメリカ人アーノルド・ローベル氏が書いた物語で、渋い茶色とグリーンのリアルでシンプルな絵にもかかわらず、子どもたちはこのストーリーのすばらしさに夢中になり、たくさんのファンが毎年誕生している。かくいう私も、がまくんとかえるくんの心温まる友情にじんわりと感動し、思わずこのシリーズを4冊とも購入してしまったほどだった。

 私は小学生時代、空想好きで本の虫だった。そして今、このがまくんとかえるくんに出会って以来、この春、「児童書」に再燃した。なんたって、大のファンタジー好きだ。特に小人ものは読みあさった。一日、何も手につかないで無性に読みふける日々が続いた。その中でもメアリー・ノートン氏の借り暮らしの人のお話しや、佐藤さとる氏のコロボックルシリーズは秀逸で、私はその物語の世界に40数年ぶりくらいに再び魅了され、思わずツワブキの葉の下をそっとめくってコロボックルを探してしまうほどだった。
 そして何冊か児童書を読んだ後に行きついたのが、ケネス・グレアム著「楽しい川辺」だった。イギリスで110年も前に出版されているにもかかわらず、その独特な世界観、美しいイギリスの川辺の風景や生活の描写、そしてユーモアあふれる小動物たちのワールドにたちまちとりこになった。この本は、最初はイングペン氏の挿絵にひきつられて手に取っただけだったのだけれど、物語の表現力がとてつもなく素晴らしく、あっという間にぐいぐい引き込まれていった。小動物たちと等身大の人間も出てきて当たり前に共存しているから親近感もいっそう湧く。ヒキガエルの破天荒なキャラクターがこの本のユーモア性を存分に引きたてているのだが、がまくんとかえるくんもそうだけれど、なぜかカエルという生き物は外国では滑稽な象徴なのだろうか。その「楽しい川辺」に夢中になり、どうしてもその先が読みたくて仕方がなく調べまくったところ、グレアム氏亡き後に、ウイリアム・ホ―ウッド氏が2冊の後続版を出版していたことを知り、またまたこれも即効でゲットして読みふけった。少々ハチャメチャな部分もあるけれど、グレアム氏に劣らぬ渾身の物語だった。

 私がこうして児童書に夢中になっていた春先、本を読むことでその頃の心の苦しみがいっとき取り去られて少しの光を感じることができた。まるで、森の中に差し込むやさしい木漏れ日のように…。
それは、心に刺さった大小様々な針が少しずつそっと抜き取られていくような感覚だった。まだ本が読めるくらいの活力があったことが救いだったかもしれない。刺さった棘が少なって、心もラクになっていき、気持ちがおだやかにもなれた。現実世界からの逃避がワクワクした空想世界へとみちびき、出てくる人々(動物たち)と共に魂が冒険することによって身体にみずみずしさがよみがえってきた。読書療法があるなら、きっとこれなのだろう。児童書のファンタジーは、子どもに向けた幻想だけではなく、大人にとっても不思議なくらいいろんな力を与えられるような気がしてくるのだ。

 今も毎日使うテーブルには、「空をとぶ小人たち」や村上勉氏のコロボックルの絵、「楽しい川辺」の本を置いている。そこにあると、重い気持ちもなぜかじんわりと落ち着いていく。いつでもこの世界に呼ばれたいという願い。今の私にとっての癒しが、まさにこれだという感じだ。なにかに救われるって、本当にあるんだな、って。

そっと、心にやさしくふる光のように。
いつか、きっと希望を見い出せますように…。

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 今年度、あたらしいデザインが登場しました。絵本の中から飛び出したような、ほんわかとしたやさしいモチーフです。森の住人たちの四季おりおりの暮らし、楽しい会話が聞こえてきそうですよ。

                             ゆいガイア 井林昌子 



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